photo by 岡崎伸一
PROFILE
伊藤 梢 Kozue Itou
1978年愛知県生まれ
茨城大学人文学部社会科学科卒
大学卒業後、水戸市の出版社(有)自在工房に入社。
その後フリーライターとして独立。
執筆が取り持つ人と人のつながり
水戸市を中心に活動する伊藤梢さんは同世代では珍しい女性フリーライターだ。現在は、企画の立案から取材・編集までこなし、主に雑誌媒体の仕事にたずさわる。また、仕事の傍ら、専門学校文化デザイナー学院で講師として教壇に立ち、ライティングの魅力を将来のクリエーターたちに伝える。伊藤さんにお話をうかがった。
愛知県瀬戸市生まれ。小学生の頃から学級新聞を率先して制作するなど、書くことが好きだった。新聞記者に憧れた時期もあったという。大学入学とともに来水。茨城大学人文学部社会科学科にて経済を専攻した。当時はバイヤーにも興味があり都内での就職も視野に入れていたが、茨城に残る事を決意。地元出版社・媒体系広告代理店への就活の末、水戸市内の出版社に入社した。
「編集希望で入社しましたが、当初の配属は営業。編集スタッフに欠員が出て初めて編集にたずさわれるようになったんです。」この会社では、グルメやビューティなどのムック本を発行しており、伊藤さんは営業から取材、撮影、編集まで一通りの仕事を学ぶ。その後、この会社は倒産してしまうが、ここでの経験は、今の仕事に活きていると話す。また、その頃のつながりが現在の仕事にもつながっているそうだ。
「あの経験はなかなかできるものではないですよね(笑)。あの頃を乗り越えられたんだから、大抵のことは可能だといつも肝に銘じています。」
倒産と同時に、いきなりフリーターデビューしてしまった伊藤さんだったが、前職のつながりから仕事を少しずつ頼まれるように。仕事をした人の紹介で、また生まれる仕事。数珠つなぎで徐々に仕事も増え、フリーのライターとしての自覚が生まれてきたそうだ。
言葉や文字、文章はその人を表す鏡
「文章は誰にでも書けるもの。そういう意味では、お仕事をいただけることは本当に有り難いと思っています。」そう謙虚に語る伊藤さん。しかし、その言葉はそれまでの8年のキャリアに裏付けられる。クライアントがその安心感やその手から生まれる文章の魅力に魅かれているからこそだろう(マピナビ編集部もその魅力に魅かれ、冊子版のコラムを毎年お願いしている)。文章にはその人そのものが出る。スキルや癖という理由もあるが、よく言われる「文章に人生がにじみ出る」というオーバーな表現もあながち嘘ではない。
「この仕事をしてると、いろいろな人にお会いできるのが一番楽しいですね。普通じゃ入れないところに入れたり、会えない人の取材も多いです。」店舗のスタッフ・オーナーから会社の社長、公務員、バンドマン…ありとあらゆるジャンル、そして大学生から年配の方まで幅広い年齢層への取材をこなす。ライターをやっていなければ出会う事のない人たち。そんな人との出会いの楽しさが、仕事へのモチベーションにつながっているという。
「文章を書いていて難しいことは、文字数の制限。書きたかったことを大幅にカットすることもしばしばです。また、言葉の選び方一つで、文章全体の印象までもが変わってしまうこともあります。言葉は、本当に奥が深いんです。」読み手にどんな感じで伝わっているのか、レスポンスが少ないため体感できないのも難しさとのこと。また、フリーのため迷惑をかける事も多く、改善していかなくてはと語る。
昨年から、専門学校文化デザイナー学院メディアデザイン学科にて、教壇に立っている。内容は、文章構成。文章の基礎から実践的なライティングまで深く学べる授業だ。
「今まで自己流でやってきたことすべてが、教えることを通して整理されます。そういう意味で改めて勉強になっていますね。文章は、その人そのもの。その日の気分や、読んでいる小説に影響されたりしますし。でも、それは決して悪い事ではないと思うんです。自分の書き方を押し付けることはせずに、その人ならではの書き方を引き出せる様に意識しています。」
書く事で、人に出会い、つなぎ、またその魅力を人に伝えること。言葉の持つ、目に見えない不思議な縁を垣間みれたインタビューとなった。
1.出版社勤務の頃手掛けたムック本の数々。グルメやビューティを中心に様々な店舗に取材を行った。この仕事を通して培ったものは大きいと伊藤さんは話す。
2.話やすい雰囲気を作ることもライターとして大切。自然に溶け込める技は女性ならでは。
3.仕事道具であるノートとICレコーダー。これに加えデジタル一眼レフを携帯する。
4.企画・編集・取材・ライティングお仕事の依頼はEメールにてcozzy55@ybb.ne.jp 伊藤 梢まで
1.「ドリトル先生物語全集」 ロフティング著 井伏鱒二訳 岩波書店
私の読書の原体験と言っても過言ではない1冊。ワクワク感満載で、夢中になって読みました。
2.「ねじまき鳥クロニクル」 村上春樹著 新潮社
大好きな村上春樹さんの小説の中でも、特に好きな1冊(第1〜3部の3冊)。何度でも読み返したい名作です。
3.「TV Bros.」東京ニュース通信社
テレビ雑誌でありながら、コラムの充実度と特集の遊び具合等、サブカルB級感と異色感たっぷりでたまりません。